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断熱性能等級の調べ方とUA値の重要性|等級ごとの違いを徹底解説
2025.6.29
#家づくりの疑問
#お家の豆知識
家づくりを検討する多くの方にとって、「断熱性能」は欠かせないポイントです。真夏の暑さや真冬の寒さから室内を守るために、住宅にどれだけの断熱性能が備わっているかは、快適な暮らしの実現に直結します。さらに、断熱性能は光熱費にも大きく関わり、省エネ住宅を目指すうえでも見逃せない要素です。
その指標として注目されるのが「断熱等級」です。しかし、「断熱等級って何?」「どうやって確認するの?」「等級によってどんな違いがあるの?」と疑問を持つ方も少なくありません。
本コラムでは、断熱等級の基本から、等級ごとの違い、断熱等級の調べ方、そしてUA値との関係までをわかりやすく解説します。家づくりを検討している方が知っておくべき「断熱性能の見極め方」を、ぜひこの機会に理解しておきましょう。
断熱等級とは何か?住宅性能表示制度の基礎知識
断熱等級とは、住宅の断熱性能を段階的に評価するための基準です。正式には「住宅性能表示制度」の中で定められており、国土交通省が所管する制度です。この制度では、住宅の性能を「構造の安定」「劣化の軽減」「省エネルギー性」など複数の観点で評価します。その中で、省エネ性能の一環として断熱等級が設定されています。
断熱等級は、数字が大きいほど断熱性能が高いことを示しています。たとえば、断熱等級4は平成28年の省エネ基準を満たす性能であり、断熱等級5はさらに上位の基準に対応しています。
この等級制度は、新築住宅を選ぶうえでの「見える化」のひとつとして非常に役立ちます。性能が数値や等級で明示されることで、住宅選びの判断基準が明確になるのです。
最新版!断熱等級の分類とその基準

2022年4月から、住宅の省エネ基準に新たな段階が追加されました。これにより断熱等級は1から7まで細分化され、より高性能な住宅の実現が求められるようになっています。
- 断熱等級1〜3:旧基準。現代の住宅としては性能が不十分とされる水準です。
- 断熱等級4:平成28年基準。これまでの標準的な性能とされていました。
- 断熱等級5:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準。省エネ性が高く、補助金制度の対象になることもあります。
- 断熱等級6:断熱性がさらに高まり、暖冷房エネルギーをより効率的に抑える設計。
- 断熱等級7:現時点で最高水準。非常に高い断熱性能を持ち、室内環境の安定と光熱費の大幅削減が期待できます。
このように断熱等級は年々進化しており、単に「基準を満たしているか」ではなく、「どの等級まで対応しているか」が大切な判断軸となっています。
UA値とは?断熱等級と密接に関わる性能指標

断熱性能を語るうえで欠かせないのが「UA値(外皮平均熱貫流率)」です。UA値とは、住宅の外壁、屋根、床、窓などを通じて、どれだけ熱が逃げるかを数値で示したもの。数値が小さいほど、熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。
断熱等級とUA値は連動しており、たとえば断熱等級5であればUA値の上限が0.6以下(地域により異なる)など、明確な数値基準が設けられています。
つまり、UA値を知ることで、住宅の断熱等級を具体的な数値で把握できるのです。断熱等級の調べ方を知るには、まずUA値がどの程度かを確認するのが第一歩ともいえるでしょう。
断熱等級の調べ方|建築前・建築後に確認する方法
それでは、実際に「断熱等級の調べ方」をご紹介します。新築の場合と既存住宅では方法が異なるので、それぞれ分けて解説します。
新築住宅の場合
- 設計図書・仕様書を確認する:設計士や工務店が作成した仕様書に「UA値」や「断熱等級」が記載されていることがあります。
- 住宅性能評価書を入手する:住宅性能表示制度を利用していれば、第三者機関による評価書に断熱等級が明記されます。
- 施工会社に直接確認する:UA値や等級の根拠を尋ねることで、実際の性能や考え方を把握できます。
既存住宅の場合
- 省エネ診断を依頼する:リフォーム会社や建築士が、断熱性能の診断を行うサービスがあります。
- サーモグラフィー調査:住宅の温度分布を可視化し、断熱性能のムラや問題点をチェックします。
- 断熱材の確認:壁・床下・屋根裏の断熱材の種類や厚さから、おおよその断熱等級を推測することも可能です。
このように、断熱等級の調べ方はさまざまありますが、UA値を起点に確認していくことでより正確な評価が可能になります。
地域区分と断熱等級の関係|あなたの住むエリアは?
断熱等級は、全国一律の基準ではありません。日本全国は気候条件に応じて「地域区分(1〜8地域)」に分けられており、それぞれに適した断熱性能が求められます。
たとえば、北海道のような寒冷地で求められるUA値の上限は非常に厳しく、一方で沖縄のような温暖地では、基準値が比較的緩やかになります。このため、同じ断熱等級5でも、北海道と九州では求められる性能値に違いがあるのです。
家を建てる場所によって、どの断熱等級を目指すべきかが変わってくるため、地域区分を確認したうえで断熱等級の調べ方を理解することが重要です。

等級が上がると何が変わる?快適性と光熱費の変化
断熱等級が高くなると、住まいの快適性と経済性が大きく向上します。
- 快適性の向上:断熱性能が高くなると、外気の影響を受けにくくなり、室内の温度差が小さくなります。夏は涼しく、冬は暖かく、ヒートショックのリスクも低減。
- 光熱費の削減:冷暖房の効率が上がることで、光熱費の節約につながります。等級5から等級7に上げた場合、年間数万円規模の削減効果も期待できます。
これらのメリットを享受するには、自分の家の断熱等級を正しく知ることが前提です。調べ方を知っておくことは、将来の暮らしを左右するともいえるでしょう。
高断熱住宅の普及と今後の断熱等級制度の展望
政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、住宅の省エネ化を積極的に推進しています。断熱等級の高い住宅は、エネルギー消費を抑える重要なカギとされ、今後は新築住宅のすべてに一定以上の断熱性能が義務づけられる可能性もあります。
また、補助金や税制優遇など、高断熱住宅を後押しする制度も拡充されており、断熱等級が家づくりのスタンダードになる日はそう遠くないでしょう。
自分の家の断熱性能を見極めるポイントと注意点
断熱等級やUA値を把握することは、住宅の性能を正しく理解する第一歩です。しかし、数値だけで全体を判断するのではなく、次のような点もあわせてチェックしましょう。
- 窓の断熱性能:ガラスの種類(Low-E複層ガラスなど)やサッシの素材(樹脂・アルミ)によって性能は大きく異なります。
- 気密性とのバランス:断熱と気密はセットで考える必要があります。いくら断熱等級が高くても、隙間風が多ければ性能が活かされません。
- 施工品質:どれだけ良い仕様でも、施工が雑であれば意味がありません。信頼できる施工会社を選ぶことが大前提です。
まとめ
断熱等級の理解が理想の住まいづくりへの第一歩
断熱等級は、これからの住宅づくりにおいて欠かせない性能指標です。「断熱等級の調べ方」を理解し、自分の家の性能を把握することで、より快適で、より省エネな暮らしを実現するための道が開けます。
数ある住宅性能の中でも、断熱性能は最も体感的に影響を及ぼす項目のひとつ。だからこそ、設計段階から積極的に確認し、納得のいく性能を持った家を手に入れましょう。断熱等級とUA値、そして自分のライフスタイルを照らし合わせながら、理想の住まいをつくっていきましょう。