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高気密・高断熱の住宅のメリット・デメリットとは?
2025.6.29
#お家の豆知識
高気密・高断熱住宅は、快適な住環境を実現するための重要な要素です。しかし、その性能を最大限に活かすためには、正しい知識と適切な施工が不可欠です。また、暮らし方やメンテナンスにも注意が必要です。
本コラムでは、高気密・高断熱住宅のメリットとデメリットを詳しく解説し、快適な住まいづくりの参考にしていただければと思います。
高気密・高断熱住宅とは?

高気密・高断熱住宅とは、外気の影響を受けにくく、室内の温度を一定に保つことができる住宅のことを指します。高気密とは、住宅の隙間を極力減らし、外気の侵入や室内の空気の漏れを防ぐことを意味します。高断熱とは、断熱材を用いて外気温の影響を遮断し、室内の温度を保つことを指します。
高気密とは何か?
高気密住宅は、建物の隙間を極限まで減らすことで、空気の漏れや侵入を防ぐ構造を持っています。隙間が少ないことで、計画換気がしやすく、外気の影響を受けにくいため、冷暖房効率が高くなります。
高気密性能を示す指標として「C値(相当隙間面積)」があります。C値は住宅全体にどれだけの隙間があるかを示す値で、数値が小さいほど高気密であることを表します。例えば、C値が1.0以下であれば高気密住宅と呼ばれるレベルになりますが、最近では0.5以下、0.3以下といったさらに高い気密性能を求めるケースも増えています。
高断熱とは何か?
高断熱住宅とは、断熱材を適切に施工し、建物の外からの熱の出入りを最小限に抑えた住宅です。冬の寒さや夏の暑さから住まいを守り、室内の快適性を維持します。
断熱性能を表す代表的な指標に「UA値(外皮平均熱貫流率)」があります。UA値とは、住宅の外皮(壁、屋根、床、窓など)全体を通してどれだけの熱が出入りするかを数値化したもので、値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。たとえば、北海道などの寒冷地では0.4以下、本州の中部地域では0.6以下といった基準が用いられることが一般的です。
また、夏場の住宅の快適性を評価するうえで注目されているのが「ηAC値(イータエーシー値)」です。これは冷房期の平均日射熱取得率を示す指標で、夏の直射日光などによる熱の取得量を数値化したものです。ηAC値が低いほど、日射の影響を受けにくく、夏の冷房効率が高まります。
このように、高気密・高断熱住宅の性能は、C値・UA値・ηAC値といった客観的な数値で評価されます。建築前の設計段階でこれらの性能を確認することが、快適で省エネルギーな住まいづくりにとって非常に重要です。

高気密・高断熱住宅のメリット
冷暖房効率の向上
高気密・高断熱住宅では、外気の影響を受けにくいため、冷暖房の効率が向上します。少ないエネルギーで室温を保つことができ、光熱費の削減につながります。
快適な室内環境
室内の温度が一定に保たれるため、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住環境を実現できます。また、温度差によるヒートショックのリスクも軽減されます。ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋へ移動した際の急激な温度変化によって血圧が変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性がある現象です。高気密・高断熱の住宅ではこのリスクを抑えることができ、高齢者や小さなお子様のいるご家庭にとって大きな安心材料となります。
結露の防止
高気密・高断熱住宅では、室内外の温度差による結露が起きにくくなります。これにより、カビやダニの発生を抑え、建物の耐久性を向上させることができます。
遮音性の向上
断熱材や気密性の高い構造により、外部の騒音を遮断し、静かな室内環境を実現できます。
室内空気の質の向上
計画的な換気システムを導入することで、室内の空気を常に新鮮に保つことができます。これにより、アレルギーや喘息の予防にもつながります。
補助金の対象になりやすい
国や自治体では、断熱性能や省エネ性の高い住宅に対して補助金や減税措置を設けていることがあります。高気密・高断熱住宅は、その対象となることが多く、建築コストの一部を軽減することができます。制度内容は地域や時期によって異なるため、最新の情報を確認することが大切です。
資産価値への影響
2024年度から「建築物省エネ法」が強化され、新築住宅には一定以上の省エネ性能が義務づけられるようになりました。また、性能表示ラベルの導入により、住宅の断熱性やエネルギー効率が数値で可視化されるようになり、買い手にとって選びやすくなっています。これらの背景から、高気密・高断熱住宅は、長期的に見て一定の資産価値が期待できる住宅と言えるでしょう。
高気密・高断熱住宅のデメリット

初期コストの増加
高性能な断熱材や気密処理のための施工技術が必要となるため、初期費用が高くなる傾向があります。ただし、光熱費の削減効果を考慮すれば、長期的なコストパフォーマンスは良好です。
施工ミスによる性能低下リスク
高気密・高断熱住宅は、設計通りに施工しないと本来の性能を発揮できません。施工精度が重要となり、信頼できる施工会社を選ぶことが大切です。
換気計画の重要性
気密性が高いがゆえに、換気が不十分だと室内空気がこもり、健康に悪影響を及ぼすことがあります。24時間換気システムなどを正しく運用する必要があります。
夏場の熱ごもり
高断熱であるがゆえに、一度熱がこもると冷めにくくなることがあります。遮熱性能や日射対策も併せて考える必要があります。
室内の乾燥
高気密・高断熱住宅では、冬場に室内が乾燥しやすくなる傾向があります。加湿器の導入や適切な換気が必要です。また、室内の湿度管理にも注意が必要です。
高気密・高断熱住宅を建てる際の注意点
信頼できる施工会社の選定
高気密・高断熱住宅は、施工精度が性能に大きく影響します。実績のある施工会社を選び、気密測定などの確認を行うことが重要です。
適切な換気システムの導入
計画的な換気システムを導入し、室内の空気を常に新鮮に保つことが重要です。また、定期的なメンテナンスも必要です。
遮熱対策の検討
夏場の熱ごもりを防ぐために、遮熱性能の高い窓や日射遮蔽の工夫が必要です。また、通風計画も重要です。
室内の乾燥対策
冬場の乾燥を防ぐために、加湿器の導入や適切な換気が必要です。また、室内の湿度管理にも注意が必要です。
まとめ
住まいの性能は、暮らしの質を決める
高気密・高断熱の住宅は、単なる「寒くない家」「光熱費が安い家」という枠を超え、これからの時代に求められる住宅性能の“新しい常識”となりつつあります。冷暖房効率の良さによるエネルギー削減だけでなく、ヒートショックを防ぎ、健康面への好影響がある点も見逃せません。さらに、結露やカビのリスクを減らし、住まいを長く快適に保つことができます。
加えて、住宅性能表示制度や省エネ基準の改正により、「高気密・高断熱」であることが数値で“見える化”され、補助金の対象になったり、将来的な資産価値にも好影響を与えたりするケースもあります。今や家づくりにおいて、これらの性能を無視することはできません。
「C値」「UA値」「ηAC値」など、聞き慣れない言葉かもしれませんが、これらはすべて住まいの快適性や省エネ性を担保するための重要な指標です。知識としてしっかりと理解し、設計段階から意識することで、納得のいくマイホームを手に入れることができます。
今後、環境への配慮やエネルギーコストの上昇などを背景に、ますます注目が高まるであろう「高気密・高断熱」の住宅。性能を数値で確認しながら、自分たちにとって最適な家づくりを進めていきましょう。